不動産一括査定の使い方

業界プレーヤー現状分析

現在、売上高ベ1スでトップを走るのが大和ハウス工業。直近の2011年3月期決算での全社売り上げは約1兆7000億円。そのうち戸建て住宅セグメント(区分)は約3200億円。

売上高に占めるシェアは約四%程度。次いで、総売上高ベ1スで2位に位置づけられるのはその額、約1兆6000億円の旭化成ホームズ。旭化成の住宅セグメント(戸建て開発のみならず、マンション開発、都市開発、リフォームなども含む)の売上高は約4000億円。

さらに、積水ハウスが売上高1兆5000億円弱と続く。メーンの注文住宅に該当する「工業化住宅請負」セグメントの売上高は7000億円あまり。注文住宅のみでのトップを走っている。

いずれにしても甘んいんこの3社が業界を牽引しているといえる。各社別の戦略は、業界構造を理解するために簡便化すると、高付加価値戦略と低価格戦略で二極化している。積水ハウスや積水化学工業などの大手ハウスメーカーは、太陽光パネルや家庭用燃料電池を搭載した環境配慮型住宅などの高付加価値住宅を展開し、収益力向上を図っている。

一方、従来から低価格で住宅・マンションの販売を行ってきた一建設、ア1ネストワン、飯田産業などの分譲住宅事業者に加え、タマホームが545万円住宅、アイダ設計が555万円の住宅を発売するなど、低価格住宅で攻勢をかける企業も存在している。市場が成熟化し、供給過多で業界内競争が過度に激しい市場においては、このような戦とうた略の二極化傾向が見受けられる。そしてその中で、プレーヤーの淘汰、業界の再編が起こるのである。

2004年に産業再生機構入りしたミサワホームの事例も、この流れの中における戦略に対する判断の難しさを理解する上で、重要な事例といえるだろう。高付加価値戦略か低価格戦略か。この生き残りをかけた二者択一の選択の中で、ローコスト戦略に最初にダイナミックに取り組んだのが、このミサワホームであった。

2001年、ミサワホームは「LIMTED」という、坪単価お万円の商品を販売開始。最初の1カ用で3700棟あまりを受注。それまでの実績と比較すれば、当時の同社の全商品を合計した、1カ月の平均受注棟数が約1500棟程度だったことを考えると、この商品がいかにミサワホームにとって画期的だったかわかる。

業界全体が注目する中、ミサワホームはLIMTEDおをさらに拡販し、記録的な販売数をしばらく実現し続けた。

しかし、結果的にそこには予想以上に大きな落とし穴があった。それは、ほかの商品が軒並み売れなくなったという点である。従来の中高級住宅購買層にとって、ローコスト住宅の登場は企業イメージやほかの商品に対するイメージを下げる効果が大きく、結果、多くの顧客が中高級路線を強化した積水ハウスやセキスイハイムなどに流れてしまった。

さらに残った顧客層も、中高級商品からLIMTEDおに乗り換える人も多く、いわゆるミサワホーム内でのカニパりゼーション(共食い)が発生したのである。ほかの商品の半額以下のLIMTEDおは、新しい顧客の開拓による受注拡大を狙った商品だったが、ふたを開けてみれば今までの客層が逃げてしまい、全体の受注棟数は減少するという本末転倒な結果に陥ってしまったのである。

そもそも、当時のミサワホ1ムはバブル期に一気に強化した大幅な事業の多角化、不動産投資事業などの影響により、多額の有利子負債を抱えていた。メーンパンクの旧UFJ銀行(現三菱東京UFJ銀行)からは、二度にわたる金融支援ぽんかいを受けるものの、挽回をかけたLIMTEDおの失敗の影響は大きく、2003年、創業みさわちょ巴者の三津千代治社長(当時)は責任を取って辞任。

ついに2004年、産業再生機構入りし、その後トヨタ自動車の支援を受けることとなった。現在は、トヨタホームとの協業を生産・販売面などで積極化することで、事業は回復軌道に乗りつつある。このように、「高付加価値町低価格」といったきわめて単純な戦略の選択のみでは生き残れない難しい時代に入りつつあるということもいえる。

2020年にも勝ち残る戸建て住宅開発企業の条件

これまで見てきたとおり、戸建て住宅開発業界は市場分散型であるがゆえに過剰なプレーヤーが存在する一方、需要全体のパイは縮小傾向にある。このような状況は2020年の市場環境を見据える上でも、この傾向がより強くなることはあっても弱まることはまず考えにくい。以上のような状況の中でも勝ち残る企業の条件は、どのような視点が挙げられるだろうカ今回は2020年に勝ち残る戸建て開発業者の条件として3つの視点を挙げたい。

すなわち、①グローバル展開、②不動産ストック事業との連携、③ファイナンス(資金調達)事業の3つだ。

①グローバル展開

グローバル展開の理由はきわめてシンプルだ。圏内での需要が縮小する中、まだ旺盛な需要が期待できる海外にその機会を求めるということである。実際、大手のハウスメーカーはすでにそのような動きを見せている。

圏内最大手の積水ハウスは2009年、移民受け入れなどで人口が増えているオーストラリアで、マンションや戸建て住宅の建設を始めた。日本と同じ素材や工法を基本としながら外壁の色やデザインなどを現地風に変え、シド?郊外などで今後叩年聞に分譲戸建て住宅約2000戸、分譲マンション約2000戸、分譲用地約2600戸分、総売り上げ約2000億円の開発を予定している。

シャンハイ大和ハウスは中国に目を向けている。同社は1980年代から上海など中国圏内で主に日本人向けに賃貸マンションの建設などを手がけてきた。2006年、大連で地元住民向けの分譲マンション事業を始めた。

2009年からは、現地法人が蘇州で分譲に必要な行政手続きから販売まで一貫して手がけている。今後は無錫などにおいて、戸建て住宅を中心にマンションを組み合わせた不動産開発を予定している。

積水化学工業は2009年、タイにて住宅生産・販売の合弁会社を設立し、現地の富裕層をターゲットとした「セキスイハイム」を販売。住友林業は、アメリカ、韓国、中国で事業を展開。

2008年にはオーストラリアにて、現地企業と合弁会社を設立し、戸建て住宅を販売している。人が生活する空間である住宅とは言うまでもなく、その国の気候や風土、生活様式や文化などが知実に反映される場でもある。

よって住宅メーカーの他国への進出は、進出国の文化や生活様式の違いなどが大きなネックとなり、これまであまり大きく広がらなかった。住宅産業が「内需産業」の代表格であるといわれるゆえんがここにある。まさに国際戦略におけるトランスナショナルな戦略が必要不可欠な業界であるといえるだろう。国際戦略における基本フレームは、大きく2つに分類される。

1つ目は、全体最適の視点を極力重視したグローバル戦略。購買、生産、販売システムなどをグローバルに統一化させることによって、バリューチェーン(価値連鎖)の効率化と単位あたりのコスト低減などを目指す戦略。

2つ目はマルチナショナル戦略。すなわち、その国や地域の特徴に合わせて商品やサービス、マーケティングなどを変えて、部分最適の集合体として国際戦略のメリットを創造するものである。言うまでもなく、これら2つの戦略はトレードオフ(二律背反)の関係にあるので、その選択は取り扱う商品やビジネスモデルによって慎重に行わなければならない。

前述のとおり住宅という商品は、その国の気候や風土、習慣などが色濃く反映される商品であるため、基本的には完全に均一化された標準モデルを、統一的に展開するグローバル戦略の選択は不可能に近い。しかし、だからといって国ごとに商品やモデルが異なるマルチナショナル戦略を全面的に採用するという選択は安直すぎる。

このようなグローバル戦略とマルチナショナル戦略のトレードオフを解消すべく、両戦略のいいとこ取りを狙う戦略が、トランスナショナル戦略と定義される。世界レベルでの調整が強く、全体戦略、理念、オペレーションなどの世界統一性は高いが、同時に各国支社に一定の権限移譲がなされ、個別戦略を立てて柔軟に動ける企業を目指す。

一般的には、経営資源と組織能力は海外子会社に分散するものの、その子会社の扱いについてはすべてを等しく扱わず、重要な子会社には手厚く、重要ではない場合には配分のレベルを下げるという優劣を明確にする傾向がある。各社の企業関係は、階層構造ではなくネットワークとして捉え、イノベーション(新製品開発)に関しても、海外子会社が開発した成果を親会社やほかの海外子会社が学習することが想定されている。

このようなトランスナショナル戦略を踏まえた上で、住宅メーカー各社は海外戦略を構築する必要があるといえる。もとより日本の住宅の品質や性能については世界でも評判が高いため、現地のニ1ズや仕様にマッチさせることができれば、十分に現地での競争力を確保することは可能である。

よって、進出エリアにもよるが、海外進出の第一歩は現地企業との合弁会社の設立や、現地企業との戦略的提携など、現地のマーケティングシステムを学ぶことからスタートすることも有効であるう。加えて、現地の文化や風土に各社が持つ「住まいづくり」のノウハウを融合させていくには、それ相応の時聞が必要であるといえる。

そういう意味において、少なくとも海外市場におけるイノベーター(改革者)的役割は、長期的な投資を継続し続けることができる体力のある大手ハウスメーカーに限定されるといえる。もちろん、中堅・地場独立系企業においても、イノベーターによって日本の技術や品質がその市場で認められ、日本の住宅作りに関する需要が高まってきた段階において、後発企業としてのチャンスは十分に存在する。

いずれにせよ、日本の住宅にかかわるあらゆるプレーヤーにとって、将来的に何らかの形での海外の需要に携わることは、戦略的に十分想定しておかなければならない1つのオプションであるといえる。

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